日本銀行のマイナス金利解除、ゼロ金利からの金利引上げに伴い、多くの銀行では住宅ローンの基準金利が引き上がっています。日本銀行からは、今後の金利目安は1%という話が出ているため、遠くない将来に住宅ローンの金利は、変動でも固定でも今よりも上がる可能性が高そうです。こんな場合、これから家を買って住宅ローンを借りる人は、どのように金利の種類をえらべばいいのでしょうか。今回は不動産会社が教えてくれないミックスローンを中心にお伝えします。
■住宅ローンのミックスとは?
住宅ローンのミックスローンとは、二種類以上の住宅ローンを組み合わせて借りる方法です。組み合わせ方は、金利ミックス、返済期間ミックス、金利と返済期間のミックスなど、いくつかの類型があります。
現在は金利上昇局面にあるため、主に変動金利と固定金利、変動金利と10年固定金利など、変動金利と一定期間固定金利を両方借りることで、金利上昇の影響を緩和することができます。
■ミックスローンのメリット
ミックスローンは金利上昇局面で有効な住宅ローンの借り方です。
●金利ミックスのメリット
例えば、変動金利と固定金利の組み合わせであれば、金利上昇時に返済額の増加を変動金利の借り入れ分に限定することができます。変動金利2500万円+固定金利2500万円の組み合わせで借りる場合、金利上昇は変動金利2500万円にのみ影響します。5:5の割合で借りている場合は、金利変動の影響を半分に抑えることができます。
変動金利3500万円+固定金利1500万円の組み合わせであれば、金利上昇の影響を3割減にすることができます。変動金利1500万円+固定金利3500万円の組み合わせであれば、金利上昇の影響を7割減にすることもできます。
●返済期間ミックスのメリット
借入期間のミックスであれば、ライフステージの変化にともなう支出増に対応することもできます。例えば、35年ローンと15年ローンを組み合わせた場合、子どもの進学でお金が必要となる15年以降に住宅ローンの返済が1つ無くなりますから、家庭の資金繰りが大幅に改善されます。
20代の夫婦が35年ローンと10年ローンで家を買って、10年間共働きを続けて10年ローンを完済し、35年ローンを繰り上げ返済したタイミングで家族計画を考えてはいかがでしょう。ローンが1つ無くなっていますから、資金繰りは改善し、繰り上げ返済も返済額圧縮型にすれば、資金繰りはさらに楽になります。余裕の資金繰りでお子さんの教育資金の積立てや早期教育を施すことができます。
■ミックスローンのデメリット
●金利ミックスのデメリット
金利をミックスしたとしても、金利上昇の影響をゼロにすることはできません。変動金利と固定金利の組み合わせであれば、変動金利分の金利上昇リスクは依然として残ります。
金利ミックスで住宅ローンを借りた場合、結果として住宅ローン金利が上昇しなかった場合や、住宅ローンの返済中に借りている本人が亡くなり、団体信用生命保険が適用になった場合、金利ミックスで固定金利を選んだことで、結果として高金利で住宅ローンを借りたことになります。
住宅ローン金利の上昇懸念が残りますので、固定金利一本で借りた場合よりも心のモヤモヤ、不安感は残ります。
●返済期間ミックスのデメリット
返済期間をミックスすると、返済期間の短いローンは返済額が増えることとなります。そのため、当初の返済計画を見直す必要がありそうです。35年ローンを2本組む場合は、返済額の計算も単純ですが、返済期間をミックスすることで、毎月の返済額、金利負担額が変わります。
管理するのが苦手な人は、情報量が増えることで、繰り上げ返済を検討したりする際に、何をどう考えたらいいか迷ってしまうかもしれません。
返済期間を短くすることは、金利上昇の影響を減らすことにもつながりますが、いかんせん返済額が増えてしまうというデメリットがあります。
●費用面でのデメリット
ミックスローンを利用する場合は、住宅ローンの契約書である金銭消費貸借契約書が二通になるため、印紙代が増えます。※印紙代は借入金額により異なります。
号 | 文書の種類 | 印紙税額(1通または1冊につき) |
1 | [不動産、鉱業権、無体財産権、船舶もしくは航空機または営業の譲渡に関する契約書] 不動産売買契約書、不動産交換契約書、不動産売渡証書など (注) 無体財産権とは、特許権、実用新案権、商標権、意匠権、回路配置利用権、育成者権、商号および著作権をいいます。 [地上権または土地の賃借権の設定または譲渡に関する契約書] 土地賃貸借契約書、土地賃料変更契約書など [消費貸借に関する契約書] 金銭借用証書、金銭消費貸借契約書など [運送に関する契約書] 運送契約書、貨物運送引受書など (注) 運送に関する契約書には、傭船契約書を含み、乗車券、乗船券、航空券および送り状は含まれません。 | 記載された契約金額が 1万円未満(※) 非課税 1万円以上10万円以下 200円 10万円を超え50万円以下 400円 50万円を超え100万円以下 1千円 100万円を超え500万円以下 2千円 500万円を超え1千万円以下 1万円 1千万円を超え5千万円以下 2万円 5千万円を超え1億円以下 6万円 1億円を超え5億円以下 10万円 5億円を超え10億円以下 20万円 10億円を超え50億円以下 40万円 50億円を超えるもの 60万円 契約金額の記載のないもの 200円 ※ 第1号文書と第3号文書から第17号文書とに該当する文書で第1号文書に所属が決定されるものは、記載された契約金額が1万円未満であっても非課税文書となりません。 (注) 平成26年4月1日から令和9年3月31日までの間に作成される不動産の譲渡に関する契約書のうち、契約書に記載された契約金額が一定額を超えるものについては、税率が軽減されています(コード7108「不動産の譲渡、建設工事の請負に関する契約書に係る印紙税の軽減措置」をご利用ください。)。 |
※抜粋 https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/inshi/7140.htm
また、抵当権設定登記の費用も増えることになります。登記費用は司法書士が専門となります。自分で司法書士を下がる、不動産会社から紹介してもらう、銀行から司法書士を紹介してもらう、友人知人に紹介してもらう、となります。
銀行ごとにミックスローンの諸費用は異なる可能性がありますので、住宅ローン審査の際に確認しておきましょう。
●対応銀行が限られるデメリット
自分の給与振込口座の銀行がミックスローンに対応していない場合、住宅ローンを借りる際に、給与振込口座を変更する必要があります。
また、今まで付き合いのない銀行との住宅ローン契約では、給与振り込み銀行よりも、接点がない分、住宅ローン審査や手続きに時間がかかる場合があります。
■ミックスローンの選び方
まずは、ミックスローン対応可能の銀行を探すところから始まります。
一般的な住宅ローン審査は、不動産会社やハウスメーカーからの紹介、給与振込口座のある銀行への相談となります。ネット検索では金利を比較することはできても、ミックスローンの比較は難しいため、自分なりに調べる必要があります。
●ミックスローンの相談ができる銀行
・住信SBIネット銀行
「「変動金利タイプ」「固定金利特約タイプ」(2年・3年・5年・7年・10年・15年・20年・30年・35年)の金利タイプの中から、2つの金利タイプを自由に選べます。組合せの比率はお客さまのご都合にあわせて1契約あたり500万円以上から10万円単位で自由に設定できます」
https://www.netbk.co.jp/contents/lineup/home-loan/first/mix
・SBI新生銀行
「ご選択いただける金利タイプの数は2つまでです。同じ金利タイプの組み合わせも可能です。それぞれの借入期間はご希望に応じて設定できますが、「変動金利」または「当初固定金利」のローンの借入期間は5年以上35年以内(1年単位)、「長期固定金利」のローンの借入期間は21年以上35年以内(1年単位)となります。また、完済時の年齢は80歳未満となることが必要です。ミックスローンの組み合わせ対象にできる金利タイプについてはお客様ご説明資料にてご確認ください。
借入金額の合計が、3,000万円以上(10万円単位)であること、一本あたりのローン金額は最低500万円以上(10万円単位)となることが必要です。
金銭消費貸借契約書にかかる印紙税は、軽減される場合と増加する場合があります。登記費用は増加します。」
https://www.sbishinseibank.co.jp/retail/housing/interest/mix
・auじぶん銀行
「「ミックス(金利タイプ数2本)」とは、金利タイプや金利プランを自由に組み合わせてお借入れいただくものです。
お客さまのお好きな組合わせでお申込みいただけます。
ミックスをご選択の場合、ご契約が2本となります。1契約ごとに登記関連費用が発生することがあります。詳しくは司法書士にご確認ください。
ミックスの場合、1契約あたりの最低借入金額は500万円となります。
保証付金利プランの場合、ミックスでのお借入れはできません。」
https://www.jibunbank.co.jp/products/homeloan/interest/mix
・三井住友信託銀行
「金利コース、金利引き下げ、ご返済方法などが異なる複数の住宅ローンを自由に組み合わせてご利用いただけます。将来の金利水準、金利上昇時のリスク許容度、ご返済計画など、お客さま一人ひとりに適した組み合わせをお選びいただけます。」
https://www.smtb.jp/personal/loan/house/mix-loan
・三井住友銀行
「変動金利型、固定金利特約型、超長期固定金利型の中から異なる金利タイプを自由に設定できます。組み合わせは10万円単位で設定可能。
ミックスプランをご利用いただくことで、異なる金利タイプのメリットをバランスよく受けることができます。」
https://www.smbc.co.jp/kojin/jutaku_loan/reason/mixplan.html
・りそな銀行
「お借入は2口となります。(ローン契約や抵当権設定契約は1契約となります)
お借入時に金額の組み合わせはお客さまのご都合に合わせて自由に設定いただけます。(50万円以上3億円以下)
お借入金額・お借入金利以外の条件(返済期間・返済日等)については、2口同一条件となります。
将来の金利情勢によっては、金利ミックスを利用しない方が総返済額が少なくなる可能性があります。
年末残高証明書は、2口で郵送いたします。
繰上返済手数料や固定特約再設定手数料は、お借入毎にそれぞれ必要となります。
条件等によっては、ご利用いただけない場合がございます。」
https://www.resonabank.co.jp/kojin/jutaku/kinri_mix
・日本住宅ローン
https://www.mc-j.co.jp/shinki/mixloan.html
■まとめ
いかがでしょうか。金利上昇時のリスクヘッジとして住宅ローンを組み合わせるミックスローンも視野に入れてみるといいでしょう。注意点は組み合わせ方が無数にあるため、付き合いのあるファイナンシャルプランナーに時間を割いてもらい、金利や返済期間の組み合わせによってどんな違いが出てくるのか確認してもらうといいでしょう。