正しい住宅ローン選びは家を買おうと思ったタイミングから始まります。覚えておいてほしいのは不動産会社が住宅ローンの事前審査・仮審査を進めてくる理由があること。懐具合を探られて予算オーバーの家を勧められないように、失敗しない住宅ローンの選び方を教えます。

失敗後悔しない住宅ローン選びの正しいステップ

1. 住宅ローンの重要性を考え始める

  • ポイントは?: 家を購入するために住宅ローンが必要だと気が付きます。家を購入することを考え始めたら、同時に住宅ローンの重要性について考えます。
  • どうやって進める?: 住宅ローンについての基本情報を調べ、どれくらい借りられるのか、どんなローンがあるのかを調べましょう。友人や家族、インターネットで情報を集めます。

住宅ローンは住宅購入の必須アイテムといっても過言ではありません。期限の利益といって、お金が無い人に35年から50年もの間、返済の猶予という時間を確保してくれる仕組みです。

住宅ローンを上手に活用すると、毎月の支払いを減らし家計の資金繰り(キャッシュフロー)を良くする(改善する)ことができるのです。

しかし、多くの人は不動産会社に勧められるままに住宅ローンを借り、比較検討を重要視しません。金利は比較しても団体信用生命保険までは調べなかったり、ペアローンや連帯債務の場合の団信で補償されない借金の返済方法を見なかったことにしてしまいがちです。

2. 予算の設定と資金計画の検討

  • ポイントは?: 自分が借りられる金額や、月々の返済額がどのくらいになるかを具体的に考えます。頭金や借入金額のバランス、返済期間などを検討します。
  • どうやって進める?: 銀行や住宅ローンシミュレーターを利用して、月々の返済額や金利の違いを比較します。また、金融機関で事前審査を受け、自分の借入可能額を確認します。

住宅購入でもっとも大切な要素の1つが予算です。予算に余裕がある場合は、失敗しても取り返すことができますが、予算が超過していると取り戻すことができません。多くの場合、買った時点よりも買った後の方が住宅の価格が下がります。

そのため、物件選びに失敗したからといって、直ちに家を買い直すことができなくなるのです。そうならないためには、住宅の予算設定が重要です。

もう1つ重要なことは、毎月の支払額を調整することです。一般に返済期間が長くなるほど、総支払額が多くなります。10年ローンと35年ローンでは返済期間の短い10年ローンの方が負担が少なくて済むのです。

金利の差が毎月返済額と総返済額にどのような影響を及ぼすか比較しましょう。

金利が変化(上昇)することで、毎月の返済額と総返済額がどう変わるか(増えるか)確認しましょう。

物価上昇が続けば金利を上げざるを得ませんので、住宅ローン金利は上がることを前提に返済計画を立てておきましょう。

このタイミングでファイナンシャルプランナーに相談するのも一案です。

3. 住宅ローンの情報収集をはじめる

  • ポイントは?: 利用可能な住宅ローンの種類や、各金融機関が提供するローンの金利、条件を比較検討します。固定金利、変動金利、ミックスローンなどの違いを理解し、自分に合ったものを探します。
  • どうやって進める?: 複数の金融機関を訪問したり、オンラインでローンの比較サイトを利用したりします。担当者に相談し、メリットやデメリットを聞くことで、理解を深めます。

毎月の返済額が変わらない「元利均等返済」を基準に考えます。10年固定金利や全期間固定金利で住宅ローンを借りた場合、変動金利よりも適用金利が高くなります。10年固定金利や全期間固定金利の元利均等返済でも返済にゆとりがあると感じた場合は、毎月の返済額が徐々に減っていく「元金均等返済」を検討するのも一案です。

変動金利タイプの元金均等返済であれば、引っ越したタイミングでの住宅ローン返済が最も多く、少しずつ返済額が減っていきます。そのため、途中で金利が上昇したとしても、元利均等返済よりも返済額の増加が緩やかで済みますし、金利が上昇しなかった場合の総返済額は、元金均等返済の方が少なくなります。

ただし、元金均等返済は取り扱っていない銀行がありますので、常に元利均等返済と元金均等返済が選べるとは思わないでください。気になる人は、直接銀行に確認してください。

住宅ローンの比較サイトであれば、金利を比較することはできますが、表示金利で借りることができるかどうかは、審査してみないとわかりませんから、複数の銀行に住宅ローンの仮審査を出す必要があります。

4. 金融機関の絞り込みとシミュレーション

  • ポイントは?: 候補となる住宅ローンをいくつかに絞り込み、さらに詳しいシミュレーションを行います。返済期間や金利の変動リスクなどを考慮して、最適なローンを見つけます。
  • どうやって進める?: 金利の変動シナリオや、月々の返済額の違いなどをシミュレートし、ローン選びの重要ポイントを再確認します。不動産会社のアドバイスも受けて最終決定に近づきます。

住宅ローン選びの際に見逃しがちなのが団体信用生命保険です。手厚ければいいというものではありませんが、ガンなどの成人病にり患し、所定の状態になった場合に住宅ローンをあなたに代わって立て替えてくれる団体信用生命保険は、民間の生命保険では賄えないことが殆どです。特に、ガン団信や特定疾病団信と呼ばれる商品は、保険料の代わりに金利負担が増えますが、金利と並行して検討すべき要素です。

このタイミングでファイナンシャルプランナーに相談するのも一案です。

5. 金融機関の決定と申し込み

  • ポイントは?: 最も適した住宅ローンを選び、金融機関に申し込みを行います。この段階で金利や返済条件について交渉することも可能です。正式な審査を受け、契約に進みます。
  • どうやって進める?: 申し込みに必要な書類を準備し、金融機関に提出します。審査が通ったら、契約書に署名し、正式にローンが成立します。

実は、仮審査・事前審査の段階では正式な金利は決まりません。本審査によって細かい本人確認や物件確認などを経て、あなたに適用される適用金利、割引金利が決まります。銀行の公式ページには変動金利に幅を持たせて書いてあったり、●%~となっていたりするのは、金利は本審査を経なければ確定できないからです。

上場企業で働いている人や、公務員の場合は最優遇金利で借りられる可能性が高いのですが、中小企業に勤務していたり、スタートアップに勤務していたり、勤務期間が短かったり、銀行のターゲットとする年収に満たない場合には優遇金利が減るため、実際の借入金利がが高くなります。

また、経営者や自営業・フリーランスの場合はそもそも住宅ローンが借りられない場合がありますので、初めからフラット35で借りられることを確定させてから、銀行にもダメ元で相談するくらいの意識が必要です。もしくは、購入後数年して返済実績を積んでから金利の低い銀行に借り換えるという戦略もあります。

外国籍の方は銀行の選択肢がほとんどありません。また、金利は優遇金利を提供されない場合もあるため、金利は諦めたほうがいいでしょう。特に永住権がない場合、永住権の有無を問わない仮審査の段階では審査を通過できますが、本審査で確実に落ちます。永住権のない外国籍の方は、不動産会社に金融機関を探してもらうしかありません。

6. ローン契約の完了と融資の実行

  • ポイントは?: ローン契約が完了し、融資が実行されます。この段階で購入する住宅の引き渡しや、購入代金の支払いが行われます。
  • どうやって進める?: 契約内容を再確認し、手続きがスムーズに進むように金融機関と連絡を取り合います。ローンの初回返済日や、今後の支払い計画についても確認します。

1人で住宅ローンを借りるか、夫婦で借りるかを選択する期限です。1人で住宅ローンを借りると一人分の収入で払える住宅ローン予算になります。

住宅ローンの実行までは、金融機関に言われた通りに書類を整え、金銭消費貸借契約書に署名し、住宅ローンの契約を締結します。後日、融資実行まで事故や火災など不測の事態が起きないよう祈りましょう。

最近は金融機関に行かなくても住宅ローンの決済ができる銀行も増えています。一般的には平日の昼間に銀行にいって住宅ローンを借りて、借りたお金を不動産会社、買い手、ハウスメーカー・工務店などの支払う手続きがあります。

融資実行を経ることで、ようやく家が自分のものになる「所有権移転登記」に進みます。所有権移転登記が完了すると、晴れて自宅が自分のものになります。

7. ローンの管理と見直し

  • ポイントは?: 住宅ローンを返済し始め、返済計画に沿って月々の支払いを行います。金利の変動やライフステージの変化に応じて、ローンの見直しを検討することもあります。
  • どうやって進める?: 定期的に返済計画を見直し、必要であれば繰上げ返済や、ローンの借り換えを検討します。金融機関に相談し、最適なプランを維持します。

住宅ローンも見直しが必要な場合があります。前向きな見直しには、金利の引き下げ、団信の見直しを伴う住宅ローンの借換えがあります。後ろ向きな見直しには、返済が厳しいため返済期間を延長するリスケ、返済額を延長するために住宅ローンを借り換える場合もあります。一般的に住宅ローンは当初借入期間よりも長い借入にすることはできませんが、一部金融機関では再度35年ローンを組むことができたり、そもそも50年近い住宅ローンを借りることができる金融機関もあります。

子どものために家を買うご家庭の場合、子どもの成長とともに食費、衣類、学費、習い事、携帯代、水道光熱費が増加します。子どもが全員成人した場合の生活費の上昇を見込んで住宅ローンの返済に問題ないかを確認しておくと良いでしょう。

住宅ローンの借換えは、家を買うタイミングと異なり不動産会社が間に入ってアドバイスをしてくれるわけではありません。ご自身で調べるか、ファイナンシャルプランナーに相談するといいでしょう。

このような流れで住宅ローン選びを進めることで、安心して家を購入することができます。住宅ローンは借換コストが100万円以上かかることが一般的ですので、契約前に比較検討することをお勧めいたします。